大学入試 基礎講座 『現代文・小論文の基礎』 其の十四

「接続関係」 〈抑揚〉

「強・弱」をつける表現といったら、なんといっても「抑揚表現」がその典型です。
「程度が軽いもの」でいったん「抑(おさ)え」ておいてから、「程度の重いもの」を「揚(あ)げ」ていきます。

A(程度の軽いもの)でさえ

ましてB(程度の重いもの)はなおさらだ。

古文の「類推」、漢文の「抑揚」が同じ表現です。
「古文の基礎」で一度述べましたが、もう一度確認しておきましょう。

大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の六十九

【古文】

類推の構文 …

 だに(すら)まして 

でさえ~、ましてやはなおさらだ。)

【漢文】

抑揚型 … 

 且 ~、 

A スラ且(か)ツ~、況(いはん)ヤ  ヲヤ

でさえ~なのだから、ましてにおいてはなおさらだ。)

いずれにしても、「」という点(ここを確認するのがミソ!)で、「A=程度の軽いもの」、「B=程度の重いもの」というのは同じです。
「A=B」、両者はイコール関係、同類項ですが、AよりもBの方が「」という点において程度が重くなっていきます。
「弱―強」のリズムで「B」を強調する「強調表現」という点では、前回やった「添加」と同様の表現といえます。
具体例に即して見てみましょうか。

【具体的事例】

夏の高校野球、地方予選。ノーアウト満塁、一打逆転の大チャンス。
打順は四番、ところがストレートど真ん中を見送り三振、選手は頭をかきながらベンチに帰ってきます。
さあ、監督はカンカンに怒っています。

「バカヤロー!あんなタマ、小学生でさえ打てるぞ!!」

ここで監督が何を言いたいのか「類推」してみましょう。

「(ストレートを)打ち返す」という点で、「小学生」は程度が軽いのがわかりますね。
まだヒヨッコですから、打てないこともよくあります。
でも、さんざんバッティングの練習を積んできた高校球児がストレートをきっちりセンター方向に打ち返すのはあたりまえ、程度が重いのです。

「あんなタマ、(打つ程度が軽い小学生でさえ打てるぞ!まして、(打つ程度が重い高校生なら打つのはなおさらだ、当然だ、言うまでもない!」

と監督は言おうとしているわけです。

「程度の軽いもの=抑」「程度の重いもの=揚」だから、「抑揚表現」。
「程度の軽いもの」だけいえば「程度の重いもの」は自然に類推できるので「類推表現」、言い方はちがっても構文の機能は同じです。
この「機能」をおさえてしまうのがこれらの構文を理解するポイントでしたね。

現代文の副詞の虫食いで、「まして」がよく出たりします。
空欄の前後が「程度の軽/重」の関係になっていたら、「まして」が入ります。

小論文において、この抑揚表現を使って、「まして、自分の意見は当然だ」と、強調できるようなら、とてもすばらしいですね。

古文の説話や、漢文の教訓話、本文末のいちばんおいしいところによく用いられる表現です。
だって「強調表現」ですからね。ほぼ、間違いなく設問になるでしょう。
しかも配点は高い。オイシすぎます!!