大学入試 基礎講座 『現代文・小論文の基礎』 其の五

「接続関係」 〈逆接 3〉

逆接を用いた立論の練習をしてみましょうか。

 「コペルニクス的転回」以来、「天動説」は「地動説」にとってかわられた。科学があたかもバイブルであるかのようにふるまっている現代社会において、「地動説」は自明なものとなっている。

 しかし、…

と、逆接してみましょう。どうです?「地動説」をひっくり返せますか?

当然のことながら、科学的な証明によって「地動説」をくつがえすことなどは不可能です。
しかし、論理(ロジック)の上でなら可能です。やってみましょうか。

しかし、我々は日常生活で「太陽が昇る」と言い、「太陽が沈む」と言っている。ここで運動しているのは太陽であって、地球ではない。いくら「地動説」をあたりまえのことと知っていても、「地球が回って太陽が現れた」とは表現しない。ということは、我々の意識(無意識)のレベルでは、いまだに「天動説」が優位を占めているのではないか。科学が万能の現代社会においても、我々の意識は何万年と変わることのない「天動説」を生きているのである。

そんなの「詭弁(きべん)だ!」というご批判はごもっとも、詭弁です。
「科学的妥当性」の問題を「言語(表現)」の問題にすりかえています。

ただし、読者がもし「フムフム」と思って読むなら、それも立派な「論」なのです。
ホームページでも展開していますが、「論述力」とは「人をうなずかせる力」なのです。
うなずかせてしまえば「勝ち」ということ。

さすがに「地動説」にツッコミを入れるのは難しいでしょうが、私たちの日常生活はツッコミどころにあふれています。
テレビのニュースを見て、学校の先生の話を聞いて、「だが、」「しかし、」どんどん逆接していきましょう。
その延長に「読解力」や「論述力」があります。

考えてみたって、「あ、そう」「ふ~ん」と日常生活、与えられたものを無批判に受け入れて過ごしている人が、どうして現代文においてだけは、逆接の先の文脈を類推できるのでしょう?
論述においてだけは、逆接して自論を展開できるのでしょう?普段からが論理的思考を鍛える訓練なのです。
どんどん逆接して批判精神を鍛えるべし!

ただ、「でもね」「けどね」なんて、いちいち口に出して言うと間違いなく友人を減らしてしまいます。
あくまで「思考」のレベルでとどめておきましょう。