大学入試 基礎講座 『現代文・小論文の基礎』 其の四

「接続関係」 〈逆接 2〉

さて、それでは実践。

前回、意見文において「逆接」は最重要、と述べました。その理由は、逆接した後に筆者の意見、主張がくることが多いからです。
もう一つ。「逆接」すると、その先の文脈を容易に類推できるからです。ホームページで、「読解力とは、『文脈類推能力』と『要約力』だ」と展開していますが、「逆接」はその「文脈類推」におおきくかかわってきます。
前後が対立するのだから、

Aである。しかし(逆接)、    

とあったら、Xの内容は容易に類推できますね。

X=Aではない。

という内容が展開するはずです。実際にやってみましょうか。今日の『毎日新聞』のコラムを引用させていただきました。

 セミの声を聞いてもファーブルともなれば日本人の思いもつかぬことを考える。
セミがさかんに鳴いているところで大砲を撃てば、どうなるのか?いや、考えたばかりでなくわざわざ役場の大砲を砲手とともに借りてきて、実際に撃ったのだからすごい。
 2度の発砲の結果、セミは何事もなかったかのように鳴き続けたと昆虫記は書いている。
ファーブルは、セミは耳が遠いから大声で泣くのだと結論づけた。
だが実はセミにも音は聞こえるが、聞き分けられる音の範囲が人とちがうことが後にわかった。
 さて日本人がミンミンゼミやアブラゼミなど夏ゼミの声を聞き始めれば梅雨明けだ。
きのうは近畿地方の梅雨明けが伝えられ、関東地方でも真夏の陽気となった。
皇居の周辺でも大砲ならぬ自動車の騒音をかいくぐってミンミンゼミの声が響き渡った。
 もっとも東日本はすぐまたぐずついた天気にもどり、梅雨明けはしばらく先になるという。
何年もの地下生活を生き抜いてようやく地上に出たセミたちには気の毒な天気だが、本格的な夏の暑さが待ち遠しいのは夏休みに入った子供たちも同様だろう。

 だが(逆接)…       

 セミの中でもニイニイゼミやヒグラシは梅雨のうちから鳴き始めるが、あまりピンとこない。
耳に入りながら周りの状況次第で気にならぬ音は人にもあるようだ。
短い生を激しく鳴いて果てるセミの音は炎暑の盛夏にこそ心にしみるが、今年は少しその勢いが気がかりだ。

(『毎日新聞』平成19年7月25日のコラムより)

 

 空欄Xの内容はだいたい類推できるでしょう?本文は、

 だが先日発表された1カ月予報によると、ほぼ全国的に気温が「平年並みか低い」という今年の夏だ。先月の3カ月予報ではラニーニャ現象のせいで猛暑が予想されていたのだが、実際は太平洋高気圧の勢いが弱く、一転して冷夏の方が心配になった。ままならないのは空模様である。

でした。逆接をはさんで、

「夏の暑さが待ち遠しい←だが(逆接)→一転して冷夏の方が心配になった」

と、「暑←→冷」のきれいな対立関係になっています。

実際に現代文を読解する際にも、ただ与えられた文脈の後追いをするのではなく、このように先々の内容を類推しながら読んでいけば、早く、正確な読解ができるようになりますよ。