大学入試直前講座 『小論文のツボ』 其の五
「国立大学後期小論文 やってはいけないシリーズ⑤」 〈ユニークな意見〉
「小論文はユニークな意見を述べなくてはならない」
などと、指導なさる先生もおられるようですが、私に言わせれば、すでにボツです。
独自性というのは結果としておのずからあらわれるものであって、前提とされるべきものではありません。
そこにも優先順位ははたらいていると思います。
小論文は論証で勝負!
先にも述べましたが、普通の問題点、ありきたりの結論で全然、かまわないと思います。
ただし、より深く論証することです。
例えば、「環境問題」がテーマになったとしましょう。
他の受験生は、「環境保護」を述べるにちがいない、よし、同じことは書くまい、「環境など壊してしまえ」と結論づけよう、と、すでにドツボにはまっています。
採点者の納得が得られるよう、論じきれるわけがない。坂口安吾みたいに、「へそ曲がり」というキャラを確立した人にのみ許される意見ですね。
「環境保護」おおいにけっこう、他の受験生もみな同じ意見を述べてくる、だったら、論証を掘り下げるのです。
①動物たちがかわいそうだから。
②他の生物が生存できない環境で人類も生き延びることはできないから。
③テクノロジーの活用を経済成長から環境保護へとシフトし、環境を「資源」としうるならば、自然環境は石油エネルギーに代替する莫大なエネルギーとなりうるから。
①は小学生低学年レベルの作文ですね。とてもかわいい。
②大学入試の小論文ぽくなってきました。
が、国立後期で他の受験生たちから抜け出ることは、おそらく難しいでしょう。
③は大学受験生ではなかなか論じることはできないでしょう。
もし、化学や生物など、他に自分の得意分野があったなら、その知識をいかして、客観的なデータ等で裏づけしてやれば、とても魅力的な論文になりますね。
それなのに、何かりっぱなこと書かなくちゃ、「愛と勇気と正義と…国民一人一人が…」と、もうわかりますね。
それから、「大学入試の小論文は書き出しで勝負!」と指導なさっている先生もおられますが、それはプロのライターの話だと思いますよ。
大学入試の小論文で、最初に大上段に振りかぶるのは…と、もうわかりますね。
待っているのは「頭でっかち尻すぼみ」型の論文です。
合格したいなら、「しり上がり」のイメージを強く持ちましょう。