大学入試 基礎講座 『現代文・小論文の基礎』 其の十七

「接続関係」 〈一方/他方〉

話題そのものを転換する、というより、見方を転換していきます。
同一の事がらの両側面にスポットライトをあてる表現です。

一方では

他方では

ここから「A⇔B」の対立関係をひっぱり出し、その矛盾点を批判したりするととてもよいです。
評論文ではよく用いられる論理(ロジック)ですね。

「高野連は、一方で、高校球児の健全な精神の育成をうたいながら、他方で、球児たちが商品のようにあつかわれている特待生制度を見て見ぬふりをしてきた。その矛盾を棚に上げたまま、全てを学校側の責任とし、野球部の廃止に対しては救済にのりだすという。それはあまりに傲慢な態度といえないだろうか。健全な精神とは、球児たちに求める前に、まずは高野連の幹部たちに求められるものではないのか。」

なんて具合でしょうか。「矛盾」をつくにはとても有効です。

あるいは逆説(パラドクス)

…矛盾しながらもひとつの事実となっている、として論じてもよいでしょう。

いたずらに字数をかせごうとして「Aだし、Bだし、Cだし、Dだし、…」と、「事がら」をただ羅列するぐらいなら、「一方/他方」を用いて一つの事がらをより深く分析した方がはるかにいい、その点でも、ぜひ身につけておきたい論じ方の一つです。
「論=一本の糸」を断ち切ることなく論じていけます。「A/B」両側面をしっかり分析する、気がついたら千字ぐらい書いていた、というのが理想です。

現代文の問題にもよくなるところです。
一つの事がらの二つの側面について述べていたら「一方」または「他方」が入るでしょう。

「矛盾」「逆説」の説明問題、記述で出されたときにも有効な表現です。
「一方で~しておきながら、他方で~していること。」なんて解答文を書くと、採点者は思わずマルをあげたくなるものです。