大学入試 基礎講座 『現代文・小論文の基礎』 其の二十

「接続関係」 〈複数の指示〉

指示語を用いることによって、「論=すじみち」が明らかになる、という話を前回しました。

今回はもう少し難しい、二者を指示する場合の指示語です。

~。~。前者(Aを指す)~。後者(Bを指す)~。

並列関係(A=B)、対立関係(A⇔B)などを受けて展開していきます。

並列関係

。また

…つまり(いいかえ)、前者(A)は~であり、後者(B)は~である。

対立関係

。しかし

ではなくて

一方は。他方は

前者(A)が~であるのに対し、後者(B)は~である。

展開するパターンは他にいくらでもあるでしょうが、以上が典型的なパターンでしょう。たとえば、

デジタル媒体においては、自分が書いた内容を後でいくらでも修正することができるアナログ媒体である自らの手による記述においては、一度書いてしまったら、後から見直して修正を加えることはほぼ不可能に近い。前者は『可逆的』媒体であるのに対し後者は『不可逆的』媒体であるといえよう。」

こんな感じで用いていきます。
「AB。AB。AB」という、二者が交互に入れかわっていくような「入れ子型」の展開では、「前者/後者」という指示語は非常に有効です。
そうしないと、書く方もわけわからなくなっていきますし、当然、読む方もわけわからん、ということになってしまいます。
二者の指示語を的確に用いればとてもスッキリします。

「一文は短めに!」ということを述べましたが、「一方では~、他方では~。」「前者は~、後者は~。」といった、文章構造が明確なものは長くなってもかまいません。
「主―述、主―述」がハッキリしていますからね。

現代文で指示語の問題にもよくなります。
要約問題、説明問題で、「前者/後者」の指示内容がデタラメだったり、指示内容はあっていてもその説明がまちがっていたり、など。
本文、選択肢に「前者/後者」があったら指示内容をよく確認してください。

以上、二十回にわたって「接続関係」を展開してきました。これらは「論=すじみち」を作っていく接着剤です。
プラモデル、家、といった構造体を組み立てるのに接着剤やクギ、ネジが必要なように、文章という構造体を組み立てる上で必要なものです。
小論文を演習する際には常に意識して用いるようにしてください。
また、これらを自由に使いこなせるようになると、必然的に現代文の成績も上がっていくはずです。